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レポート
野毛の「今」と「昔」を歩く。
京急線「日ノ出町駅」から歩いて数分。横浜・野毛エリアでは図書館や野毛山動物園、公園等のリニューアルが進行しています。障害の有無や年齢、天候を問わず、誰もが心地よく過ごせる場所へと、街は大きな変貌を遂げようとしています。

右)2016年撮影 横浜市中央図書館外観
こうしたファミリー層向けの再整備が進む一方で、坂の下に広がる飲食店街もまた、激動の歴史を経て「誰もが楽しめる街」へと進化を続けています 。
いまや「飲食の聖地」として全国的にも名高い野毛ですが、京急アドエンタープライズではどの程度浸透しているのでしょうか。社内で実施した「野毛エリアに関するアンケート」の結果をご紹介いたします。

アンケートの結果、9割の社員が1度でも訪れたことがあるものの、頻度は年1回程度と少ないことが分かりました。

野毛に訪れる目的はグルメ(居酒屋・レストラン)の回答が圧倒的に多く、野毛の印象は「活気ある飲み屋街」で認識されています。
実は、現在の賑わいは決して偶然の産物ではありません。かつて「港の男たちの休息地」として荒々しい活気に満ちていたこの街は、時代の荒波に揉まれながら、現在はあらゆる世代を惹きつける日本屈指の飲食街へと姿を変えています。
今回はそんな野毛で長きに渡り、お店を経営している3つの名店をピックアップ。取材内容を元に、この街が歩んだダイナミックな今昔物語を紐解いていきます。
まず、創業から野毛を知る『センターグリル』二代目店主と、『パリ一』の店主にお話しを聞きました。
無頼な空気が漂う街から「通過点」の繁栄へ(1950年代〜昭和中期)
かつて港湾業務が人力中心だった時代、野毛には日雇い労働者向けの安価な飲食店や簡易宿泊所が密集していました。街には独特の緊張感が漂い、酔客によるトラブルが絶えず、夜は女性が一人で歩くのが難しいほど荒っぽい治安の街でした。
しかしその一方で、街は活気に満ち溢れておりました。当時は伊勢佐木町が横浜随一のメインストリートであり、終着駅である桜木町駅から伊勢佐木町へ向かう人々の「主要な通り道」として、野毛には自然と膨大な人の流れが吸い寄せられていたのです。
衰退の危機と「どん底」の時代
転機が訪れたのは高度経済成長でした。野毛は街の存亡の危機に関わる大きな転換期を迎えます。
1964(昭和39)年のJR根岸線の延伸により、桜木町駅が終着駅ではなくなったことで、乗客は野毛を通らずに関内方面へ直接向かえるようになりました。さらに2004年には東急東横線「桜木町駅」が廃止。これら相次ぐ交通網の変化によって、街はかつての「賑わいの中継地点」としての役割を失ってしまいます。
交通の要所としての利便性が薄れ、周囲で近代的な再開発や大型ビルの建設が進む中で、古くからの常連客が減少。一時は多くの店がシャッターを下ろす「どん底」の時期を経験することになりました。
逆境が生んだ「野毛大道芸」と再生の種
この未曾有の危機に対し、街の人々は手をこまねいていたわけではありません。1986(昭和61)年、商売敵同士でもあった店主たちが手を取り合い、客を呼び戻すための起死回生の一手として「野毛大道芸」を開始。このイベントはやがて日本最大級の大道芸フェスティバルへと成長し、「文化の街・野毛」という新たな顔を世に知らしめました。
また、2004年の東急東横線廃止の際には、地元商店街による粘り強い交渉の結果、東急電鉄から「営業補償」としての協力金が支払われました。この資金は街の街路灯の整備や環境浄化、プロモーション活動に充てられ、疲弊していた街のインフラを支える貴重な軍資金となったのです。
若き起業家による再生と「野毛スタイル」の確立
そして街を救ったもう一つの要因が、意外にも「家賃の下落」でした。2000年代前後、客足が遠のき家賃相場が下がったことで、意欲ある若手起業家や移住者たちが次々と流入。彼らは古い店舗の「居抜き」物件などを活用し、現代的なセンスを取り入れたカフェやバー、立ち飲み屋を続々と誕生させました。そこで生まれた短時間で安く楽しむ「立ち飲み」「はしご酒」は、いつしか若い世代にとっての新たな文化として定着。
現在の野毛を支えるのは、「伝統を守る老舗」と、「革新を続ける新進気鋭店」の共存です。
新旧の名店が互いを認め合い、肩を並べるその姿にこそ、時代を超えて受け継がれる「野毛の矜持」が息づいています。
さらなる街の魅力をひも解くべく、ここで伝統を守り続ける老舗と、新たな風を吹き込む新進気鋭の名店を少し紹介いたします。老舗は『センターグリル』さん、新進気鋭は『Bar Noble』さんにそれぞれのお店のこだわりと個性を伺いました。
店舗の特徴と取り組み
●老舗 センターグリル(開業1946年)
創業以来、「安くて美味しく、ボリューム満点」という一貫性を守り、流行に流されない姿勢を貫いています。そのポリシーは「昨日やったことを今日やる、今日やったことを明日やる。」という地道な積み重ね。
盛り付けられる器も創業当時から変わらず、昔ながらのステンレス皿を使用し続けています。

●新進気鋭 Bar Noble(開業2004年)
海外視察や店主自ら飲食店を渡り歩き、情報収集を徹底。また技術向上のためスタッフ達は様々なコンテストにも挑戦し続けています。今回の取材では、その研鑽の証ともいえる世界大会優勝のカクテル「グレート・サンライズ」をご用意いただきました。
こうした本格的な技術の一方で、Webサイトでメニューや金額を明示するなど、若者が安心して入れる工夫を凝らしています。

これからの野毛、安心・安全な街へ
現在の野毛は、かつてないほど「安心・安全な街」へと進化を遂げ、子連れ客や観光客の姿も目立つようになりました。
しかし、活気が戻る一方で、悪質な客引き問題や高額請求の被害、増え続ける酔客によるトラブルなど、秩序維持のための地域ぐるみの対策や目配りが求められています。
野毛は、時代の変化をたくましく受け入れ、一度は「どん底」を見た人々が踏ん張って再生させてきた街です。2026年度には横浜市中央図書館のリニューアル工事も予定されており、野毛山から麓の飲食店街まで、新旧の文化を織り交ぜながら今もなお独自の魅力を放ち続けています。
これから初めて訪れる方は、ネット情報を活用して安心できる店を選びつつ、新旧の文化が混ざり合うこの街特有の空気を、慎重に、かつ存分に楽しんでみてはいかがでしょうか。

最後に余談ですが・・・
取材を終え、私たちもまずは”乾杯”。
今回の取材は、長年野毛近辺に住み野毛の事を熟知している社員と、野毛にはプライベートで時々訪れる社員、そして今回が野毛デビューの社員という、知識も経験もバラバラな三人の社員で訪れました!
乾杯したお店は取材先の店主に教えてもらった『武田屋』さん。鎌倉ハムやコンビーフを使った本格的な料理と、こだわり抜かれたドリンクの数々に、全員が大満足。
「通も初めても等しく楽しめる」そんな野毛という街の魅力を、身をもって体験した取材班でした。


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