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レポート

世界大会を“地域と成功させる”という仕事

~「ANAウインドサーフィンワールドカップ横須賀・三浦大会」を地域とともに盛り上げる“持続可能な沿線文化”の創造ミッション~

舞台は世界最高峰のウインドサーフィン大会が開催された横須賀市・津久井浜海岸。この大会はトップアスリートが競う国際大会であると同時に、地域連携、行政調整、自然条件、国際競技運営といった多様な要素が重なり合う、非常に複合的なプロジェクト。このプロジェクトを中心的にマネジメントした横須賀市文化スポーツ観光部企画課エンターテイメント推進担当の加藤広大さんと、大会終了後にプロジェクトの振り返りでお話を伺いました。

(左)運営担当/株式会社京急アドエンタープライズ
営業本部 第四営業部 佐藤秀貴
(右)ANAウインドサーフィンワールドカップ横須賀・三浦大会実行委員会
企画運営担当/横須賀市文化スポーツ観光部企画課 主査 加藤広大さん

津久井浜が世界に選ばれた背景

始まりは2015年、ANAから横須賀市への提案でした―。

加藤さんは、大会誕生の経緯をこのように振り返ります。
「津久井浜は、〈陸と平行に風が吹く“サイドショア”〉〈陸近くで水深が深くなる急深の地形〉そして〈都心から約1時間というアクセス性〉を備えたエリアで、こうした条件が重なり、古くからウインドサーフィンに適した場所として評価されてきました。さらにトッププロ選手からの大会会場として適しているとの評価もあり、2017年、日本では1993年の静岡県御前崎での開催以来24年ぶりとなるワールドカップ開催へとつながりました。」

「開催できること自体がゴールではなく、津久井浜がウインドサーフィンの名所となるよう継続していくことが重要だと考えてきました」(加藤氏)

大会運営を担う実行委員会は、ANA、京浜急行電鉄株式会社、神奈川県、横須賀市、三浦市が構成員を担っており50社を超えるスポンサーやサポート企業が参画しています。その中で京急アドエンタープライズ(以下、当社と言います)は、大会運営・各所調整・広報PRなどを担う立場として関わってきました。

当社担当の佐藤に、地域と企業が連携する際に特に重視したポイントを聞きました。

「地元の飲食店やウインドサーフショップといった地元の事業者様を可能な限り大会に巻き込む事が不可欠と考え、大会に賛同してもらい積極的に参加してもらう事を目指しました。そうすることで『うちの近所で勝手に世界大会をやっている』ではなく『一緒にやっている世界大会だ』と自分ごとになるようなマインドになるよう、各所との調整を重ね、一緒に大会を盛り上げる雰囲気作りを大切にしました。例えば選手や海外のスタッフに提供するランチボックスを地元のカフェのオーナーとディスカッションを重ね、味付けやボリュームにこだわったメニューを作り上げるなど、ホスピタリティの側面からも地元事業者と協業しました。」

グローバルなエアラインのANAから地元サーフショップ、ボランティアスタッフなど地域が一体となって大会を作り上げた。
「単なるスポーツ大会ではなく、地元の力で成功させることが一番重要なミッション」と語る佐藤

自然条件と向き合う大会運営の難しさ

当然の事ですが、ウインドサーフィンは風の状況に大きく左右される競技です。前日の夕方にスケジュールが急に変更され、大会ディレクターから「朝だけ風が良さそうだから競技開始は翌朝8時に変更」と決まることも。

「試合を朝8時から始めるには運営スタッフは6時には現場には到着し準備をしていないといけません。スタッフ配置をはじめ人員計画を柔軟に組み替える必要があり、その調整には事前の想定とシミュレーションが欠かせません。また、自然条件は陸で開催されるイベントにも影響します。強風時などには安全管理の観点からも、様々なアクシデントを常に想定しながら現場での判断が求められます。」(佐藤)

こうした目立たない部分での積み重ねが、大会の安定した運営につながっていったと言えます。

30カ国以上の国と地域から集まる選手もまた自然条件と向き合いながらの真剣勝負に挑んでいる。彼らのチャレンジ精神や期待に背く事がないよう最善を尽くす。

競技を“体験”として届ける工夫

基本的に沖合で行われるウインドサーフィン競技は、陸の観客から見えにくいという側面があります。
そこで本大会では、ドローン映像や望遠カメラで迫力ある競技の様子を撮影し大型ビジョンで生中継、競技の臨場感を伝える工夫が施されています。さらに、2025年大会ではフランスの名産品が楽しめるフェアや全国のグルメ物産展などを同時開催し、広い会場を全体で楽しめる空間づくりにも注力しました。その結果、天候に恵まれたことも良い影響につながり、今大会の来場者は過去最高の約3万8,000人、オンライン配信を含めた総到達数は15万人を超えました。

「競技だけでなく、会場にいる時間そのものを楽しんでもらえたらと考えて取り組みました」(加藤氏)

そのように語る横須賀市文化スポーツ観光部加藤さんの狙い通り、出店者のグルメブースは売り切れ御免のお店が続出しました。

「ワールドカップの成立がもちろん重要だが、持続可能な大会をするためには地域が一体となって盛り上げる事が最も大切」と話す加藤氏。
老若男女、年に一度の地元ワールドカップ開催を楽しんでいた。

世界大会の裏側にある「達成感」

「ANAウインドサーフィンワールドカップ横須賀・三浦大会」はイベント運営、広報PR、地域連携のいずれか一つに収まるものではありません。

①国際大会としての基準に基づいた運営補助
②地域とのコミュニケーションによるエリア活性化
③自然条件への柔軟な対応による大会運営
④各事業者との連携と参画支援

こうした要素を総合的に支える仕事が、この大会の裏側にはあります。

「正直大変なこともありますが、“この街でやる意味”を一番考えながら、大会に関わる全ての人たちと近い距離で向き合っていけるところが、大変やりがいと達成感のある仕事だと感じています」(佐藤)

大会に関わる人たちと近い距離で向き合えることも自分自身の財産にもつながると話す佐藤

沿線が人をつなぎ、地域が支える世界大会。

グローバルなスポンサーや構成員の支えで世界から一流の選手が集まっている本大会の表向きは、華やかで派手な事業のように見えますが、その舞台裏には泥臭い現場での調整や動き続ける人たちの実に多様な仕事があります。

「最も重要視すべきは沿線のまちが活性化し、地域の価値が上がる事です」そう語る横須賀市文化スポーツ観光部加藤さん。

「横浜や都心からアクセスの良い津久井浜で持続的な開催を重ねていく事で、地元だけに留まらず、沿線や三浦半島全体に大きな価値をもたらす事が僕のビジョンです」と佐藤は続けました。

―世界大会を地域と共に動かす仕事―

沿線で育まれた関係性と地域の支えがあるからこそ、この世界大会は走り続けられるのです。

持続可能な沿線文化を創り上げるという壮大なミッションのために、もう1ランク磨きをかけた大会にする。二人の目にはもう次の大会が映っている。

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