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レポート

地方遠征!全国のまちづくりから学ぶ ―宮崎・福岡編―

沿線文化研究所では、日々の仕事で関わるまちづくりプロジェクトや、沿線での暮らしの中での発見、そして全国各地での視察や学びを通じて感じたことを、これから記事としてまとめていきます! さて、今回は地方遠征! 全国のまちづくりに学ぶ ―宮崎・福岡編― です。

当社では、横浜市金沢区の富岡・能見台地区における「みんなの富岡・能見台 丘と緑のまちづくり」、通称「おかまち」を、地域の方々と京急電鉄、横浜市、近隣の大学とともに進めています。

▶︎おかまちについて詳しくはこちら → https://newcal.jp/kanazawa/feature/okamachi

今回は、そんな「おかまち」のようなまちづくりプロジェクトの参考に、地域、商店、企業、行政、大学など、地域に関わるさまざまな方々が協力して行うまちづくりの手法やマインドを学ぶため、宮崎と福岡に行ってきました!

今回訪問したのは、こちらの5か所です。
●ATOMica宮崎(宮崎市にあるコワーキングスペース)
●宮崎市のグリーンスローモビリティ「ぐるっぴー」
●久留米市市民活動サポートセンター「みんくる」
●ハンダアパートメント(居住者とDIYや家庭菜園を行いつながりをつくるアパート)
●一般社団法人imau.「じじっか」(ひとり親ふたり親ではなく、7人親へ。―地域子育てによる教育を目指す施設)

さまざまなお話を伺い、学びがたくさんありましたが、すべてを紹介すると長くなってしまうので、筆者的に特に面白い、自分の仕事に活かしたいと思ったポイントを切り出して共有します!

■ ATOMica(宮崎市)

比較的コワーキング利用が少ない土日を、中高生向けに開放。学生からの発案で趣味のコミュニティが立ち上がり、今では株主であるイオンモールでのイベント企画などにも発展しているそうです。

「ここでいろいろチャレンジした記憶が学生たちに残り、いずれここに、宮崎に戻って来るような場所になると嬉しい」と話していた代表の言葉が、とても心に残りました。

高校生とおこなったワークショップの様子が掲示されていました

■ ぐるっぴー(宮崎市)

コロナ禍で利用者が減少し、運用資金が課題になった中で始めた工夫が印象的でした。

●コロナ前から「乗り物が可愛い!」と子どもたちの間でアトラクション的な人気があったことに注目し、子どもたちをターゲットにしたイベントを開催。
●運行ルート周辺の企業に協賛を依頼。60社にアプローチし、令和6年度は29社が運営サポーターとして協賛。

イベントで地域との接点が生まれていたこともあり、「子どもたちの笑顔が見られる乗り物」として共感が広がり、協賛にもつながっていったという話は、おかまちで取り組んでいるとみおかーとという地域交通の事業にも活かせるところがあると思いました。

のりばのサインやバスラッピングなど地域のデザイナーが作成

■ みんくる(久留米市)

任意団体「くるめ協働CASE PJ」と、地元企業「久留米ガス株式会社」が共同事業体として久留米市からセンターの管理・運営の指定管理を受けている体制がユニークでした。非営利団体と民間企業、そして行政が手を組むことで、それぞれの得意を活かしながら地域活動を支える仕組みができていると感じました。

また、私たちが日々感じている「相性が悪そうな人同士を、どうコラボさせていくか?」という問いに対し、スタッフの方が「思いっきり喧嘩させてます(笑)。でも、意見を言い合っているのを見ていると、意外と本質的にはやりたいことが一緒だったりするんです」とおっしゃっていたのが印象的でした。
 お互いを深く理解しないまま進んでいることが、実は多いのかもしれないとハッとさせられました。

■ ハンダアパートメント(久留米市)

家庭菜園や入居者と一緒に行うDIY、地域に開いたイベントなどを通じて、空室が多かった築古マンションを再生した「ハンダアパートメント」。
 半田兄弟自身も住みながら、入居者とともに“当事者”としてまちづくりに取り組む姿勢が印象的でした。
「管理人がジョウロを持って花壇に水やりをしながら、入居者と挨拶や世間話をするだけでも、関係性は変わっていく」という言葉に、地域に入って一緒に場をつくる第一歩はそういう地道な主体性が重要なんだと感じました。

建物を「管理する人」「利用する人(入居者)」という立場に分けず、みんなで手を動かすことで混ざり合い、コミュニティが育っていくプロセスに、「つくることの力」を学びました。

■ じじっか(久留米市)

「実家より実家」―血縁のない大家族を気負わずにつくるというコンセプトが、自然体で楽しそうに過ごす子どもたちの表情からも伝わってきました。

食材や洋服、文具などを無料で配布していた際に感じた「必ずしも無料で渡すことがその人のためになっているわけではない」という違和感から、「リリボンマーケット」が生まれたそうです。

リリボンとは、古着や着物のハギレを編み込んでつくるファブリックロープのこと。4歳児から無料で作れ、その長さに応じて物品と交換できる仕組みになっています。

この仕組みによって、「受け取る人」から「一緒に作る人」への意識の変化が生まれているかもしれないと思い、感動しました。

リリボンを使って作ったしめ縄

さいごに

今回の視察を通して、拠点運営やモビリティに関するまちづくりについて、さまざまな運営組織の形態や手法、そして発想にふれることができ、とても参考になりました。それ以上に心を動かされたのは、どの地域でも“当事者”としてまちに関わっている方々の熱量や覚悟。その想いに背中を押されるような場面が多く、自分たちの活動を見つめ直すきっかけにもなりました。

次回は、今回の視察での学びも受けて、今年度から新たな展開を始めた「おかまち」の取り組みについてご紹介していきます!

とみやま えいた

京急アドエンタープライズ エリマネ担当
前職はまちづくり会社でコミュニティデザインや拠点運営、イベント企画などを行う。趣味は、ハンドドリップコーヒーと写真を撮ること。

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