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レポート

横須賀をe-sportsの聖地へ

全世界のe-sports人口は、今や1億人を超える。
新しい文化としても、ビジネスとしても成長が見込めるこの業界に横須賀市はいち早く目を付けた。
まちを元気にする起爆剤、只今セットアップ完了!

緑に囲まれた谷戸の地域から世界発のカルチャーを配信する

近年、地域活性化の一助としてe-sports事業を取り入れる地方自治体が増えている。e-sportsは、若者がまちに関心を持つための仕掛けづくりや教育的な観点だけではなく、高齢者の認知症や介護予防対策にも効果が期待されている。画面の中はボーダーレスな世界。運動が得意ではない人や障がいのある人も同じ土俵で戦えるし、匿名性の高さから、引っ込み思案だったり閉じこもりがちだったりする子どもたちの活躍の場になっている実例もあるとか。京急沿線では、横須賀市や横浜市、川崎市などがe-sports事業に着手。とくに横須賀市では、まちを特徴づける文化としてe-sportsを根付かせるために、2013年からe-sportsだけでなくアニメ・漫画・ゲーム・雑誌といったサブカルチャーのとがったコラボレーション企画を推進中だ。これまでに無料のオンラインマルチプレーヤー海戦ゲーム「World of Warships」とスマホゲームアプリ「アズールレーン」とのコラボ企画をはじめ、民官協働でさまざまなイベントを実施してきた。活動を続けているうちに、ゲームの制作会社やPCブランドとの人脈が広がっていき、2019年に立ち上がったのが「Yokosuka e-Sports Project」だ。同プロジェクトは10年先まで見据えた大規模な計画で、横須賀市のe-sports聖地化を目指す。この取り組みでは、インテルやMSI、NTT東日本、ヤマダホールディングス(TSUKUMO)といった企業が手を組んでいる。その「Yokosuka e-Sports Project」で行っている事業のひとつが、遊休資産となっていた水道局の旧待機用宿舎をリノベーションして、プロチームのゲーミングハウスとして利用することだ。そして、2023年1月、プロe-sportsチームの「BC SWELL」が横須賀への移住を決めた。

一つ屋根の下で暮らすメンバー。「THE Base APARTMENT」には、練習場と個室が完備されている。
チームの練習場。

マインドはアスリートであり エンターテイナー

「THE Base APARTMENTS(ザ・ベースアパートメント)」が住まい兼職場。株式会社SWELLが運営する「BC SWELL」は、横須賀をホームグラウンドに世界のトップを目指すプロe-sportsチームだ。「勝ちにこだわる人じゃないと続けられない世界」。そう話すのは「BC SWELL」設立メンバーのひとり、プレーヤーネーム氏。ほとんどのe-sports大会には優勝賞金が設けられており、プロゲーマーたちは賞金獲得を目指して日々練習を重ねる。世界中のチームと対戦するため、明け方まで試合が続くことが日常だ。「BC SWELL」のメンバーには、18歳で高校野球をやりながらプロゲーマーになった人、世界一になることを目標に修士論文を書きながら見事、世界大会に出場した人、ゲーム好きの父親の影響で4歳からマウスを握っていた人、e-sports先進国の韓国で世界一のチームに所属していた人などがいて、背景はさまざま。彼らは「PUBG Mobile」や「VALORANT」など、ゲームタイトルごとにチームを組む。オンライン上で顔を合わせることなく、コンマ何秒で決まる勝負の世界。だからこそ個々の技術以上に、チームワークや戦略が勝敗のカギを握る。「僕たちが勝ち抜くドラマを、楽しんで見てもらえたら」。ボーダーレスな勝負の世界で、彼らと一緒に夢を見よう。それこそが、e-sportsの醍醐味だ。

健康面はパフォーマンスに直結する。日々の掃除や食事作りには、近所に住む「娘がe-sportsのファン」という鈴木さんがパートタイムでやって来る。この日の昼食は中華。夜は主菜1品、副菜3品の栄養バランス満点のお弁当が用意される。
「ゲーマーは動かないか筋トレにハマるかの2択が多いですね」by Criticaltomato氏。

自治体による全国初の試み。部活動支援でプロゲーマーを育てる。

横須賀市では次世代のプロゲーマーを育成するために、2019年、市内の高等学校にゲーミングPCを無償で貸し出し、ネットワークセキュリティーの整備を通じた立ち上げ支援や大会開催などを全国に先駆けて展開した。今では市内の半数以上の高校が部活動にe-sportsを取り入れている。市のプロジェクトにいち早く手をあげた三浦学苑高等学校では、横須賀をホームタウンのひとつとするサッカーJ1リーグの横浜F・マリノスが有するe-sportsチームのプロ選手を指導者として招くなど、本格的な技術指導にも力を入れている。

三浦学苑高等学校では、2019年に部活動としてe-sportsを導入。最近ではe-sportsがやりたくて入学する生徒もいるとか。顧問の伊東 亮教諭(左)と前田豊教諭(右)は、「生徒たちはゲームの話でコミュニケーションを図る。趣味で終わらせず、ゲームで発信力や考え方が深まる活動に発展させていきたい」と語る。

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